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■『戦旗』1629号(2月5日)6面 公務・公共サービスで働く 全ての人の労働条件を改善させよう 小原 薫 ●はじめに 公務・公共サービスは、地域における労働者・市民の生活・生命を支えており、役割の必要性と重要性は確実に高まっている。しかし、地方自治体における公共サービスを担っている多くの人は、「会計年度職員」という非正規公務員である。 「会計年度任用職員」に集中する矛盾を、闘いによって乗り越えよう。さらにすべての公務労働者のストライキ権奪還に向けた闘いを組織しよう。 ●1 会計年度任用職員とは 二〇二〇年四月に施行の会計年度任用職員制度は、二〇一七年の地方公務員法・地方自治法の改定によって生まれた非正規公務員の職を位置づける制度である。法律改定は、公務分野の非正規公務員の「働き方改革」と位置づけられ、以前は法的位置づけが明確ではないまま、人数と種類が増加していた。任用(採用)根拠を明確化することが目的とされたと同時に、各地方自治体による採用条件のばらつきを一律化することも目的とされた。それまでは特別職非常勤職員、一般職非常勤職員、臨時的採用職員等とあった職の多くは、「会計年度任用職員」として整理された。しかし、単年度任用の職と位置づけられ、さらに従来あったストライキ権も奪われた。 ●2 会計年度職員の実態 公務・公共サービスの主な担い手である地方公務員の定数は、総務省の調査で一九九四年度の三二八万二四九二人(都道府県及び市町村、一般行政、教育、警察・消防の全団体・全職員数)をピークとして職員定数が減少し二〇二一年度は二八〇万六六一人となっている。 臨時・非常勤数は、二〇二〇年の調査では、国・地方を合わせて八五万人を超える状況(国:一五万人、地方:約七〇万人)。その内、女性が占める割合は、国が47%、地方が76%である。会計年度任用職員を職種別に見ると、一般事務職員が一八万三〇〇〇人(29・4%)、技能労務職員六万二〇〇〇人(10・0%)、保育所保育士五万八〇〇〇人(9・3%)、教員・講師三万九〇〇〇人(6・2%)、給食調理員三万五〇〇〇人(5・5%)となっている。勤務形態は約九割がパートタイムで、技能労務系職場以外は女性が多い職場である。主な職種の時間給の全国平均は、事務補助職員九九〇円、給食調理員一〇一四円、保育所保育士一一五九円、教員・講師(義務教)一五八三円と報告されている。 ●3 ボーナス支給の差別を許さず闘おう また、一時金(ボーナス)支給時に地方自治体の正規職公務員と「会計年度職員」との間には大きな差別がある。 二〇二二年の勧告により一部の自治体では一定の報酬増は見込めるものの、もともと最低賃金に近い時間単価や昇給がない、または、あったとしてもわずかという実態である。また、正規職員に支給される生活関連手当(住宅手当や扶養手当)がほとんどない。制度導入の看板であった一時金(ボーナス)については、差別支給が大きな問題となっている。 現在ボーナスの支給は、「期末手当部分」と成績率が反映する「勤勉手当部分」の二段階になっている。しかし、地方自治体の会計年度任用職員には「勤勉手当」部分が支給されていない。(国家公務員の臨時・非常勤職員である期間業務職員は、人事院規則で勤勉手当を支給できることになっており、期間業務職員の七~八割に勤勉手当が支給されている)。この間、減らすときには「期末手当部分」、増やすときには「勤勉手当部分」とされていたため、会計年度職員は制度発足以来ボーナスは減る一方だった。 今年度の勧告では、例えば東京二三区の場合、「期末手当」部分は変わらず年間二・四カ月であったが、成績率が反映される「勤勉手当部分」については〇・一カ月引き上げられ二・二五カ月となった。二三区職労の交渉団体である特区連は区長会に対して、会計年度職員のボーナスの「期末手当部分」を〇・一カ月上げるべきだと主張し、一部の区長はこれに理解を示していた。しかし、不当にも二三区人事委員会が横やりを入れ、引き上げは実現しなかった。 こうした差別待遇に対して、地方自治体の会計年度職員への勤勉手当を求める声も多い。われわれは、ボーナス支給を二段階にして、人事考課と業績評価制度による能力・成果主義と結びつかないように改善させていく闘いを正規・非正規を貫いて闘おう。 ●4 組織化を進め労働条件の改善を勝ち取ろう この会計年度任用職員制度は今年度大きな節目を迎えている。国は臨時・非常勤職員の任期の更新にあたっては「公募によらない再度任用は二回まで」としており、全国の自治体へも通知の形で示されている。制度導入時の労使交渉で五年まで延長している自治体(東京二三区のほとんど)もあるが、圧倒的多くの自治体は三年までとなっている。公募による雇止めという不安を抱える会計年度職員は多く存在している。 こうした中だからこそ組織化を進め、希望者には再度任用を可能とする制度改正や賃金・労働条件等の処遇改善を取り組もう。そもそも常時ある仕事は本来正規職員で行うべきである。「安上り行政」の手段としてある「会計年度職員」の活用や業務の委託を改めさせ、希望者の正規職員化を勝ち取ろう。 ●5 すべての公務・公共サービスの労働者へストライキ権を 「会計年度任用制度」が始まる以前は、「非常勤職員」は「特別職の公務員」とされ、労働三権があった。しかし会計年度職員は「一般職の公務員」とされ、団結権のみ、現業職には団体協約権も在るが、現業・非現業ともストライキ権がはく奪された。会計年度職員のみならず、すべての公務員に労働三権を取り戻す闘いも重要な課題である。 公務員にストライキ権がない国はほとんどない。この間アメリカやヨーロッパでは、諸物価高騰に対して、運輸労働者、病院労働者などがストライキで闘っている。 日本においても、戦前は東京市交通局の労働者がストライキで果敢に戦った歴史がある。そして、敗戦後においても長い間天皇制官僚機構の中で特権意識が煽られ、眠らせられていた「官吏」たちも「霞を食って生きていけない」と闘いに立ち上がった。教育労働者が闘いの口火を切ると闘いは燎原の火のごとく広がり、一九四七年二月一日のゼネストへ闘いは進んでいった。しかし、占領軍による「ストライキ禁止」の恫喝の前に二・一ゼネストは中止されてしまった。 その後も労働者は生き抜くための闘いを繰り広げていた。そうした中、翌一九四八年七月二二日占領軍は、芦田首相あてに「日本の政府機関その従属団体に属するものは、何人といえども争議行為もしくは政府運営の能率を阻害する遅延戦術その他の紛争戦術に訴えてはならない」という書簡を送った。これを受けて政府は、七月三一日「政令二〇一号」を公布した。これは、占領政策に乗っかった日帝の労働運動つぶしである。 これ以降日帝は、「公務員法」「公労法」によってストライキ権をはく奪した。こうした中でも国鉄や郵政等で働く労働者は、逮捕も辞さずストライキや休暇闘争を闘った。そして、一九七四年から始まった諸物価高騰に対する闘いの中で、国労や私鉄総連、自治労などは賃上げを要求して、ストライキで闘った。七五年一一月二六日~一二月三日にかけて国鉄労働者はスト権ストを闘った。全逓は七八年に年賀状のぶつダメ闘争を闘った。一方日帝は、「国労をつぶす」ことを目的とした国鉄の分割民営化(一九八七年)と首切りが行われ、総評解体(一九八九年)、連合結成と、労働運動の解体攻撃を続けた。 これに抗する闘いが今、全労協などによって闘われている。東水労などは、ストライキを含む闘いを行っている。また、地方自治体の職場では「スト権投票」が高率で批准され続けている。ストライキを含む闘いは、現業・非現業を貫き、正規非正規の団結や委託労働者も含むすべての公務・公共サービスで働く労働者の団結と闘いを再生する闘いでもある。すべての公務・公共サービスで働く労働者のストライキも辞さない闘いで、ストライキ権奪還に向けて闘おう。 |
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